日高山脈から吹くおろし風
十勝千年の森では特に春と秋、日高山脈から強い風が吹いてきます。十勝では「日高おろし」「馬糞風」と呼ばれることも。おろし風の仕組みについて、帯広測候所にお話をうかがいました。
十勝地方では西よりの風で強風となる場合、日高山脈の影響を受けて局地的に非常に強い風が吹くことがあります。特に風向が西~西南西では、山頂から山脈沿いに吹き降ろす風、いわゆる「おろし風」によって風速が20m/sを超える暴風となり、倒木や電柱倒壊、看板落下などの被害をもたらすことがあります。
おろし風が発生しやすい気象条件は、サハリン付近に低気圧があり、山脈に直交するような西~西南西の風が強まって、西から冷たい空気が流れ込むことと、上空に対流が起きにくい空気の層(安定層)があることによります。
この安定層が山頂より少し上の高さまで降下することで、山頂の風下側にできる山岳波(※1)の振幅が大きくなり、上空の強い風が地表まで達し、局地的な暴風をもたらすおろし風となります(イラスト参照)。
※1 強風が山を越えたときに、その風下側に発生する波(重力波)
十勝地方では、南部を中心におろし風による暴風を観測する時がありますが、十勝南部以外でも10年に一度程度、おろし風による暴風や被害が発生しています(2010年3月21日、2021年12月1日)。また、その他にも地形的な影響を受けた局地的な暴風により被害が発生しています。
【例】
・1994年2月2日 根室本線西新得信号場付近で発生したJR特急の脱線転覆事故
・2015年10月8日 上士幌町ナイタイ高原レストハウスの倒壊
2015年10月10日 十勝毎日新聞より
【十勝地方 おろし風の概念図】
※安定層は、青い矢印(強い風)のすぐ上、矢印の動きに沿うように存在するイメージです
★おろし風以外にこんな強風も…「地狭風」
【地狭風の概念図】
イラスト提供:帯広測候所