十勝千年の森/TOKACHI MILLENNIUM FOREST

十勝千年の森では、大自然を体験できる北海道ガーデンの他、ヤギの哺乳体験なども楽しめるファームガーデン、見て食べて楽しめるキッチンガーデンや現代アートの展示、セグウェイに搭乗できる体験ツアーがあります。

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アート作品から感じる、アイヌの息吹

 北海道には、「アイヌ(アイヌ語で、人間)」という先住民族がいます。狩猟採集が生活の基本で、自然界のものそれぞれに神や魂が宿ると考えていました。文字を持たない彼らは「ユーカラ(アイヌ語で、叙事詩)」に歴史や教訓を含め、口伝(くでん)という形で継いできました。十勝にも、アイヌの神々の関わりを描いた、アイヌ神話が残っています。
 十勝千年の森は、この地に伝わる神話をもとにしたアート作品を2点、常設しています。ひとつは「キサラのカケラ」、そして「カムイのサークル」。今回は、セグウェイガイドを行うかたわら、ライフワークとして8年以上アイヌ神話について調べている矢萩秀則(55)に神話を教えてもらいました。ヤリでそがれた山神の耳のカケラ
「昔、オプタテシケ(石狩岳)の神は、男神で、アカンヌプリ(雌阿寒岳)の神は、女神で、夫婦だった。ところが喧嘩別れをして、女神はもとのアカンヌプリに帰った。が、怒りが収まらない。男神(石狩岳)を狙って、ヤリを投げつけた。すると、二山の間にヌプカウシヌプリ(東ヌプカウシ山)が、立っていたので、ヤリで耳を削ってヤリは外れた。女神は失敗した-」(吉田厳著:『とかちアイヌ研究』より)

 「キサラのカケラ」は、2m以上ある緩やかな三角形の岩で、アースガーデンの芝生に設置されています。キサラはアイヌ語で「耳」。女神が投げたヤリで削られたヌプカウシヌプリの山神の耳のひとかけらを表現し、存在感を放っています。
 東ヌプカウシヌプリは、鹿追町・上士幌町・士幌町をまたいで広がる山。その山神の耳のかけらが、ぽつんと落っこちているという壮大なストーリーも、日高山脈に連なる広大なガーデンでは現実味を持って感じられます。
 「この神話は、伝わる地域によって多少の差異はあるものの実在の山々が語られています。ただ、ひとつだけ明らかになっていないのは、跳んでいった耳の行方。その耳が表す山も、実は十勝千年の森内にあるのではと推測しています。調べを進め、関連性が見えてくるとおもしろい」(矢萩氏)。

十勝のシカと日高のシカの争い もうひとつの神話は、同じくアースガーデンに置かれたアート作品。円を描くように設置された9つの岩と、その真ん中に置かれた1つの岩が、清水町に伝わるアイヌ神話の一部を表しています。


「この大地にまだ人間が住んでいなかった昔のこと、十勝の鹿と、日高の鹿がけんかをした。
『おれらの国はせまくて、仲間が大勢いるからとても暮らしにくい。広い十勝に住むのは、ちょっとおれらにも同情して、土地を分けてほしいもんだ』…日高の鹿がそんな申し込みをしたが、十勝の鹿はすぐさま強く言い返した。『どんだけ十勝が広いったって、おれらの土地はおれらのもの。一足たりとも入れさせないし、草一本、木の葉一枚もやるわけにはいかん』と。それでついに力づくの戦いになってしまった。
(中略)日高の鹿も十勝の鹿も必死に戦い、いつ果てるとも分らない長期戦になった。角は折れ、毛は抜け、皮が破れて無残な姿となっても、両軍は戦いをやめようとはしなかった。戦いは何ヶ月続いたのか、もうヘトヘトにつかれたころ、カムイが現われた。
『その方ら、何で戦っているのだ。同じ鹿の仲間でありながら、平和の神の教えにそむき、血を流しあうとは何とおろかで、あわれなことか!これからは私の遣いとなって、仲良くこの緑の大地を守って行きなさい』カムイはそう言って、鹿たちを仲直りさせた。カムイの使者となった鹿は、その後十勝と日高を行き来するようになり、平和に暮らしている。また、両軍の鹿が戦った川には〈ホネオップ(鹿の骨を捨てた場所)〉という名前がつけられ、争い事のいましめとしたそうだ―」(平原文庫第二巻 十勝のアイヌ伝説:平原の手帳編集部)


 9つの弧を描く岩と、中央の岩は、神話の中で十勝のシカと日高のシカが、神(カムイ)を囲い、仲直りする一場面を思い起こさせます。仲を取り持つ=縁結びのご利益があるのではと、神を表す岩を触っていくお客さんも多いとか。
 矢萩さんは、園内を流れる川の名前(ホネオップ川)と神話に出てくる川の名前が一致することに触れ、「シカの物語になぞらえているが、過去に十勝アイヌと日高アイヌの戦いがあったのでは。風化させず、神話も日本の歴史のひとつとして残していきたい」と話します。アート作品や園内の雰囲気から、この地に残る先住民族の息吹を感じてみては。

矢萩秀則

矢萩秀則

Hidenori Yahagi

セグウェイガイド

1965年生まれ、十勝育ち。ナキウサギの写真を撮るため山中でひたすら待ち続けたり、海や川で釣った魚を料理して食べるのが好き。十勝千年の森では、セグウェイガイドを中心に業務にあたるが、チェーンソーで木の伐採や、重機を操作して土木作業や除雪作業も行うオールラウンダー。

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