来園のラストチャンス 9月は庭の集大成
夏が過ぎるとガーデンシーズンも終わったと思われがちですが、十勝千年の森の見ごろはまだまだこれから。開花を終えた草花が種を残し、豊かに実り、庭のクライマックスを迎えます。世界のさまざまなガーデンでは、秋になると収穫祭が開かれるなど、この季節を大切にしています。今回は「この時期の庭の色が大好き」と語る、ヘッドガーデナー・新谷みどりに4つの庭の見どころを紹介してもらいました。
◎次の世代へ種子を残す メドウガーデン メドウガーデンのメドウが「草原」を意味するように、この庭には細長い草「グラス」の群生や、結実して種が詰まった「シードヘッド」(=写真右)が広がります。どれも茶色く似ていますが、じっくり見ると、品種ごとの形の違いに気づくことでしょう。さらに、キク科のアスターや、赤く小さな花をたくさんつけるタデ科の植物、気温の変化によって生まれる秋ならではの草紅葉 (くさもみじ)が、グラスやシードヘッドの色と調和するように咲いています。
この森の庭では、夏至や秋分など1年を24に分けた二十四節気を、さらに3つに分けた七十二候が伝える自然の繊細な変化を意識して庭づくりをしているため、春の芽だしから開花、結実の秋まで、すべての段階が見ごろと考えています。
◎収穫期を迎える キッチンガーデン じゃがいもやトマト、かぼちゃなど30~40種類の野菜を育てるこの庭は、エネルギーが湧いてくるようなカラフルな色合いが特徴です。収穫した野菜は、販売することも。建物の一角にある、ガーデナーが収穫を祝って野菜を並べる装飾展示も、にぎやかになります(=写真)。このように飾ることで、「植物と人との距離を楽しく近づけるようにしたい」というガーデナーの思いがあります。
さらにキッチンガーデンでひときわ目を引くのが、大輪のダリアの花。ピンクやオレンジ色の花びらは、この庭に合うように深みがある色の品種を選んでいます。
◎時の流れを感じる アースガーデンとフォレストガーデン アースガーデンに立つと、春は新緑と雪に覆われた日高の山、夏はカンカン照りで木々の陰影がはっきりと映る芝生が見渡せますが、秋は空を見上げてみてください。日を追うごとに光が柔らかくなり、昼を過ぎると少しずつ夕方を感じさせるような空模様へと変化します。うろこ雲やひつじ雲も秋らしさを感じさせます。冬が近づくと、日高山脈の紅葉が始まります。
フォレストガーデンは、9月下旬頃からミズナラなどの広葉樹が色づき、10月中旬を過ぎると、追うようにカラマツが黄色く染まっていきます。
季節や時間の流れを感じられる秋。開園期間は例年、10月中旬までです。新谷は、庭をめぐる人へ、「一面に広がる満開の花だけではなく、草花が種子を残す姿の美しさを知り、庭に流れるすべての季節のガーデンを楽んでいただければ」と話します。(写真:野呂希一)